2019春季生活闘争
2019春季生活闘争方針 
   2019春季生活闘争で労働組合がベアの継続を求め6年目を迎える。三重一般同盟は2014年から5年間デフレ経済で下がり続けた賃金水準の底上げと大手企業との格差是正のため、大幅な賃上げを求め積極的な闘争を展開してきたが、目標とする金額には遠く及ばず小幅なものであり、労働者が実感できる賃上げを獲得するまでには至らなかった。
 2019春季生活闘争では、消費税増税が予定されるなか労働者が生活水準を維持・向上し、将来への不安を払拭して豊かで安心して暮らしていける社会を実現するため、ベアの継続はもとより大幅な賃上げの獲得による格差是正にこだわった闘争を展開したい。
 
1.春季生活闘争を取り巻く状況

(1)経済情勢
 日本経済は世界経済の回復を背景に輸出が増加し、設備投資も増加するなど、緩やかな回復を続けている。景気回復はすでに5年半を超えて長期化しているものの家計消費は依然として伸び悩んでいる。労働需給が引き締まり企業の人手不足感が高水準に達している一方、企業収益は過去最高となり内部留保も過去最高を更新している。しかし、企業が生み出した付加価値の使途である人件費の伸びは緩慢で労働分配率は低下を続け、実質賃金も横ばいとなっている。賃金が伸び悩んでいることから勤労者世帯の可処分所得も景気回復以前の水準を下回って推移し可処分所得が伸びないことから慎重な消費行動が続き、家計消費の伸びは弱いままである。
 世界経済は今後も緩やかな回復が続くと見込まれるが米国の通商政策や金利上昇、トランプ大統領の政権運営、英国のEU離脱交渉、北朝鮮や中東の地政学的リスクなどの世界経済を押し下げるリスクが強まっており注意が必要である。
@国内総生産(GDP)
 実質GDP成長率は2018年7〜9月期で実質▲0.3%(年率▲1.2%)となった。西日本豪雨や台風、北海道地震などの自然災害による個人消費や工場の生産、物流が停滞したことが大きく影響した。2019年度政府経済見通しでは、実質GDP成長率の見通しを2018年度0.9%、2019年度1.3%としており、日本銀行は「経済・物価情勢の展望」で2018年度1.4%、2019年度0.8%、民間調査機関予測の平均が2018年度0.71%、2019年度0.68%となっている。
A消費者物価指数
 消費者物価指数は10月総合で前年同月比1.4%、2015年を100として102となっている。2017年度年間実績は0.7%であった。政府経済見通しでは総合で2018年度1.0%、2019年度1.1%となっており、日本銀行の見通しが2018年度0.9%、2019年度1.9%(消費税率引き上げの影響を含む)、民間調査機関予測の平均では2018年度0.87%、2019年度1.22%(同)の見通しとなっている。
B消費支出(個人消費)
 総務省の家計調査によると9月の消費支出(二人以上の世帯)は前年同月比で実質▲0.5%となり3ヶ月ぶりに減少した。2014年から年平均の推移を見ると前年比実質で2014年▲2.9%、2015年▲2.3%、2016年▲1.7%、2017年0.3%と減少を続けている。
C為 替
 アメリカ経済は長期の景気回復を続けるなか金利引き上げを継続しており、2018年4月から11月までドル円相場の月平均は107円から113円台のレンジで推移した。今後も為替の急激な変動に注視が必要である。

(2)賃金動向
 毎月勤労統計調査によると労働者の賃金(一人平均)は9月の現金給与総額が前年同月比0.8%増となった。うち所定内給与は0.7%増、所定外給与は0.2%増となっている。また、一般労働者では現金給与総額が前年同月比1.2%増となり所定内給与が1.0%増、所定外給与が0.5%増となった。
 実質賃金は9月前年同月比0.6%減となり物価上昇が実質賃金を押し下げた。総務省の「家計調査」による可処分所得を年度毎に見ると前年比実質で2013年▲1.3%、2014年▲2.9%、2015年▲0.1%、2016年0.4%、2017年0.7%と2年連続で増加したものの小幅なものとなっている。足元では、2018年9月に前年同期比▲1.8%となっている。

(3)雇用動向
 完全失業率は2018年10月が2.4%で2017年以降2%台で推移しており、完全雇用状態が続いている。
有効求人倍率は2018年9月に1.64倍に達し、44年8ヶ月ぶりの高水準を記録した。10月の有効求人倍率は1.62倍、正社員有効求人倍率も1.13倍となったが好調な状態が続いている。また、三重県の有効求人倍率は2018年10月に1.69%で、全国平均を上回っている。
 日銀短観の雇用人員判断では「過剰%」−「不足%」が▲35、先行き▲38となり全産業で人材不足感が一層高まっている。

(4)企業業績
 企業業績を見ると上場企業の純利益は2018年4−9月期で過去最高を2年連続で更新する見通しとなっている。
 2017年度法人企業統計調査によると企業の収益を示す経常利益は前年に比べ11.4%増加し、引き続き企業業績を伸ばしている。また、2017年企業の内部留保(利益剰余金)は446兆円で前年から約40兆円増加しており、現金・預貯金も220兆円で約11兆円の増加となっている。経営者は景気の先行きへの不安から企業防衛を優先するデフレマインドから脱却できず、企業収益拡大による内部留保の増加分は預貯金や金融資産、負債の圧縮に回り、好調な企業業績が続くなか、労働分配率が減少傾向にあることから企業業績の伸びに人件費の伸びが追いついていないことから「人への投資」に慎重な姿勢を続けている。

(5)中小企業の状況
 日銀短観によると中小企業の業況判断は12月調査で「良い%」−「悪い%」が12となり9月調査と変わらず横ばいとなった。しかし、先行きに対しては▲6となっていることから経営者は引き続き慎重な見方をしている。雇用人員判断では「過剰%」−「不足%」が▲39、先行き▲43となり中小企業での人材不足の度合いが深まる一方となっている。
 2017年度法人企業統計調査を見ると中小企業(資本金1億円未満)の経常利益は前年に比べ13.3%増加し、内部留保(利益剰余金)も8.4%増加するなど大企業だけではなく中小企業にも賃上げに対する余力を積み上げていると見るべきである。しかし、景気動向と共に原油価格の変動に伴う燃料費や電気代などのエネルギー関連費用の増加が中小企業の業績に与える影響に注意が必要である。
 政策・制度では従来からの「所得拡大促進税制」が一層拡充され、賃上げや人材育成、IoTなどへの投資に積極的な企業に対し実行税率を引き下げるなどの優遇措置がとられており、会社に対し政策・制度の積極的な活用を求め、賃上げにつなげていく必要がある。


2.春季生活闘争に対応する労働界の動向

(1)連合方針
  連合は2019春季生活闘争方針で前年と同様、すべての労働組合は月例賃金にこだわり賃金の引き上げを目指すとして賃金改定分(ベースアップ)の要求水準を2%程度を基準とし、定昇相当分(賃金カーブ維持相当分)を含め4%程度としている。また、規模間格差の是正に向け各組合の賃金と連合が示した賃金水準を比較し、示された賃金水準との差を各組合それぞれが確保するとし、併せて 「大手追従・準拠などの構造を転換する運動」の継続と定着が必要であるとしている。

(2)大手産別の要求基準状況
 春季生活闘争を牽引すべき自動車、電機などが加盟する金属労協(JCM)が3年連続で要求基準を「3000円以上の賃上げ」とすることを決めたが、個人消費拡大による景気回復のため大幅な賃上げが社会的要請であるなか、組合員の期待に答えるため生活維持・向上を目指し賃上げを求めるべき労働組合の要求水準にしては低すぎる。好調な企業業績と労働需給が逼迫するなか、物価上昇により低下した実質賃金を引き上げ、2019年10月に予定されている消費税増税に備え、デフレ経済で下がり続けた賃金水準の底上げを求め、労働組合が積極的に賃上げを要求すべき時に、要求水準が低いままでは大幅な賃上げは期待できない。 春季生活闘争における相場形成に主導的な役割を果たすべき金属労協の賃上げ要求水準が連合方針の半分程度では、続く中小組合への波及は期待できず、中小組合にとって2019春季生活闘争は一層苦しい闘いとなる。中小組合に対しては 「大手追従・準拠などの構造を転換」への取り組み継続や「付加価値の適正循環」 の構築に取り組み、「格差是正」や「人への投資」を求め中小企業労働者の賃金水準の底上げ、格差是正を目指すとしているが中小企業は大手企業の下請けや関連企業ばかりではない。独自にがんばる中小企業の労働者のため大手組合は雇用確保を前提とした要求を続けてきたものわかりの良い労働組合から意識を変え労働者の生活安定・向上を求め毅然たる態度で会社と対峙する積極的な労働組合に転換すべきである。
産別の要求方針(案)は次のとおりである。
名  称 2 0 1 9 要 求 方 針 (案)
自動車総連

電機連合
基幹労連
JAM
UAゼンセン
 企業規模別に5つ月額賃金モデルを示した上で
 各組合に要求を委ねる
 ベア  3,000円以上
 ベア  3,500円以上
 ベア  6,000円
 ベア  2.0%基準


3.春季生活闘争の基本課題
(1)賃金の底上げと格差是正
  2018春季生活闘争の結果は、連合の最終集計(定昇込み賃上げ)において全体で2.07%(前年比+0.09%)、5,934円(同+222円)となっている。企業規模別で見ると300人以上で2.08%(同+0.09%)、
6 ,111円(同+202円)、300人未満では1.99%(同+0.12%)、4,840円 (同+350円)となった。
 2018春季生活闘争において5年連続で賃上げ(ベア)を獲得したが、小幅なもので物価上昇に追いつかず実質賃金が伸びていない。年金保険料率の段階的引き上げにより実質可処分所得も増えず賃金上昇が実感できない。可処分所得が伸び悩むなか個人消費には若干の上向き感が見られるものの、勤労者世帯の家計支出も低下傾向が続いており消費拡大に向けた勢いは感じられない。このまま10月に予定通り消費税率が引き上げられれば物価を0.5%程度押し上げると見込まれ、実質賃金を押し下げることが予想される。
 力強い経済と実感できる景気回復を実現するためには「人への投資」を促進し、賃金だけでなく労働諸条件の改善をはかり、働く者のモチベーションを維持・向上させることが不可欠である。
 2019春季生活闘争において、賃上げをめぐる環境(労働需給、企業収益、物価)が極めて良好である。労働者が生活の維持・向上はもちろん、将来への不安を払拭し、安心して暮らしていける社会を実現するため、労働者が実感できる大幅な賃上げを求めたい。
 中小企業と大企業の賃金や一時金の格差は年々拡大し、退職金、その他労働条件や労働環境でも格差は存在する。同じ労働者としてこの格差は容認できるものではない。加盟するすべての労働組合で大幅な賃上げを獲得し、賃金水準の底上げ・格差是正から、中小企業労働者の生活維持・向上をはかるとともに働き方の見直しを進め、今後一層の労働力不足が懸念されるなか大手企業に比べ人材確保が不利な中小企業にとって、がんばって働く優秀な人材を会社につなぎとめ人材確保のためにも格差是正に強力に取り組まなければならない。
 最後に賃上げが3%を超えた1994年の賃上げ要求は5.4%であった。1999年以降、要求水準が低下し同時に賃上げ実績も低下してきた。背景には長年雇用確保に重点が置かれてきたこと、デフレマインドを払拭することができていないことが考えられる。2019春季生活闘争においては、労働組合として意識を変え労働者の期待に答えるべく大幅な賃上げにつながる要求基準とする。
 新卒採用者の売り手市場と言われるなか、優秀な人材確保と賃金全体の底上げを図るためすべての賃金の基礎である初任給の引き上げを求めたい。 
 企業が将来の固定費増加としての性格が強い賃上げを避け、対象期間の業績の結果として一時金で年間所得の維持・向上をしたがる傾向にある。家計では月々の生活費補填としての性格が強ことから、あくまでも月例賃金の引き上げにこだわった姿勢を貫いていく。
 春季生活闘争をはじめとする経済闘争において、基本給を基準として要求や団体交渉をおこなってきた組合においては、賃金の上げ幅や一時金の月数が過大に評価され、平均賃金が低く評価されるなど基準内賃金での交渉と比べ賃上げ額や一時金の実額が低く抑えられる傾向が見られる。そこで従来から基本給を基準としていた組合に対し、「基準内賃金」を基本とした要求や交渉への転換を強く求めたい。

(2)中小企業の賃上げで個人消費拡大
 日本経済が緩やかな経済成長を続けるなか、実感できる景気回復を達成するためにはGDPの6割を占める個人消費の拡大がなくてはならない。しかし、労働者の約70%を占める中小企業の多くでは賃上げ水準が低く、中には先行きへの不安や脆弱な企業体力強化を理由に賃上げに消極的な中小企業も多く消費拡大につながっていない。今春季生活闘争では個人消費への影響が大きい中小企業労働者の賃上げを確保・継続することはもちろん、所得水準が低く抑えられてきた中小企業労働者の賃金水準の底上げ、格差是正により将来への安心や生活向上、消費マインドの改善につなげたい。

(3)定期昇給分の確保と定昇制度の確立
  中小企業の賃上げが少なく、かつ賃金カーブが低く抑えられているのは、定期昇給額が大企業より低いことが最大の原因といえる。特に中小企業では賃上げ交渉の基礎となる定昇分を低く設定する傾向にある。そのため1年1歳の賃金差が極端に低く抑えられている状況は、経験や能力向上分、企業への貢献度がまったく評価されていないと同然である。大企業の定期昇給分が約2%あることを考慮すると、定期昇給制度の有無に関わらず定期昇給分(賃金維持)として基準内賃金の2%以上を確保した上で賃上げや格差是正を求めていく。
 また、定期昇給分が確保され要求・交渉でベアに集中することができる定期昇給制度の整備や制度化を求めていきたい。


(4)ワークライフバランスの実現に向けて
 @労働時間短縮 
  三重一般同盟はワークライフバランス(仕事と生活の調和)の実現に向け労働時間短縮を重点課題として取り組んできたが改善が見られない。働き方改革関連法が順次施行されることを踏まえ、残業時間の上限規制などを先取りする形で次の課題に積極的に取り組む。
[長時間労働の抑制]
  時間外労働時間の短縮
  労働時間関係法令の遵守の徹底
  サービス残業の撲滅
  36協定の点検(残業時間の上限規制に向け)
   ・定める延長時間や特別条項による上限時間
   ・過半数労働組合・過半数代表者のチェック
   ・周知状況など
  労働時間管理・適正把握の徹底
[総労働時間の縮減]
  所定内労働時間の短縮
  年間休日の見直し
  年5日の年次有給休暇取得義務づけと年次有給休暇の取得促進
 A仕事と家庭の両立
  出産・子育てや介護のため退職することなく仕事と家庭を両立しながら働き続けられる職場の実現にむけ、両立のため柔軟な働き方ができる環境や制度の整備、職場風土づくりが必要である。
 「改正育児・介護休業法」をはじめとする両立支援制度を充実し、周知や利用促進、取得しやすい職場環境の整備に取り組むとともに、労働協約や就業規則を整備していない組合については早急に整備に取り組む。


4.春季生活闘争の要求基準
 2019春季生活闘争においてわれわれ中小企業労働者の生活水準の維持・向上と拡がり続ける大企業との格差是正を求め、同時に消費拡大を目指す社会的要請に応える景気回復のためにも積極的に大幅な賃上げの要求を避けられない。
(1)賃上げの基準
 2019年も引き続き賃上げの継続が求められるなか、月例賃金の引き上げにこだわり賃金水準の底上げと格差是正を積極的に求める要求としたい。特に格差是正を求めるため、今年度も「金額での要求」とする。
 要求基準を、すべての組合で、13,000円以上(組合員平均) とする。

(2)初任給要求
 賃金の底上げをはかるためには、初任給の引き上げが必須である。本年春季生活闘争では社会水準を確保し基準内賃金の2%程度の引き上げを目指す。

[参考] 連 合 18歳高卒初任給 参考目標値 172,500円
  経団連 18歳高卒初任給 2018年実績 169,362円
    22歳大卒初任給   214,518円

(3)一時金要求基準
 年収確保の観点から一時金の要求基準は例年を踏襲し基準内賃金で年間5ヶ月以上(金額で1,500,000円以上)を基準としたい。しかし、昨年に要求基準以上の一時金を獲得している組合は実績を踏襲して決定する。

(4)ワークライフバランスの同時要求事項
 春季生活闘争では賃上げ交渉が中心となるが労働時間や労働条件、2019年4月から順次施行される働き方改革関連法についても併せて積極的に交渉のテーブルに載せていきたい。重点課題である[長時間労働の抑制]や[総労働時間の縮減]、「仕事と家庭の両立」などワークライフバランスの実現に向けた課題を同時要求として加盟組合は積極的に取り組む。


5.闘争の体制


(1)賃闘委員会の設置
 執行委員で構成する三重一般同盟賃闘委員会を第46回定期大会終了後設置し、闘争の流れに応じてその都度具体策を設定し、加盟組合に指示するとともに、闘争全般の指導推進にあたる。

(2)闘争の推進
@賃闘オルグの実施
 賃闘に臨む情勢把握と方針の徹底をはかることを目的に、加盟組合執行部を対象とした「賃闘オルグ」を実施する。オルグは、三役を中心に編成し地区を分担して実施する。
A決起集会の開催
 賃闘の盛り上げをはかり全員参加で闘う体制を確立するため、全組合員の動員をおこない「春季生活闘争勝利決起集会」を加盟組合単位に開催する。
 開催時期はヤマ場が形成される時期などと連動できるように配慮し、賃闘委員会で決定する。また、連合三重の主催する「決起集会」にも積極参加する。
B賃闘情報の発行
 闘争状況の集約と伝達が速やかに実施できるよう「三重一般同盟2019春季生活闘争ニュース」を適宜発行する。

(3)定昇制度の整備への支援

 定期昇給制度の整備や確立に対し、賃金制度・体系確立のための情報等の提供や支援を行う。

(4)闘争スケジュールの設定

 次のスケジュールに全加盟組合が歩調を合わせ統一闘争を推進する。
  ◎要求提出日  2月22日(金)まで
  ◎回答指定日  3月13日(水)集中回答日 
  ◎解決目標    3月27日(水)  ※最終期限を3月中決着とする

 


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